阿覧引退

阿覧が引退した。29歳という若いうちでの引退であるが,師匠の退職による部屋替え,癌による体力の衰え(30kgも体重が落ちたそうだ)が重なったそうだ。帰国後は実業家に転身するそうで,相撲道を極めに日本に来たというよりも,スポーツ選手として日本に出稼ぎに来たように感じられる。そこからして他の力士とは違った雰囲気があるが,それだけ日本の大相撲に金銭的な魅力があるというのは良いことではないか。
怪力を誇るロシア人ではあったが,得意技ははたき込みであった。それも大振りで突きなのか紛らわしくはたくので,他の力士には見られない特徴的なはたきであった。阿覧の出自はレスリングであるから,レスリング仕込みかとおもいきや,琴欧洲黒海など他のヨーロッパ力士にもあまり見られないので,阿覧特有のものではないかと思う。ただ,その従来の相撲では想定されていないはたきゆえに,髷をつかんだと判定されたこともしばしばあり,不運ではあった。またはたきが得意ではあるが突き押しの相撲というわけではなく,中腰で,接近する相手をとにかくはたき続けるという体捌き自体がすでに特徴的であった。
それだけ膂力があるのだから組んでからの相撲をとればいいのではないかと常々言われ,かつたまに右四つに組むとその膂力を活かした寄りができていたことから,もったいなかった。ただし組んでからの攻めが遅く,寄るまでに時間がかかったため,そう得意では無かったのであろう。本人もそれがわかっていたから,あまり組まなかったのではないか。最も躍進していたのは2010年の一年間でこの年は敢闘賞2回の新関脇である。2011年からの約2年半は進歩が無く,エレベーターではあったが,特徴的な相撲で土俵を沸かせていた。お疲れ様でした。

(この記事は九州場所後に本家に転載予定)